江戸しぐさに学ぶ
外岡
龍ケ崎も13地区(小学校区)があるとお聞きしてますが、江戸と同じ混住社会の地区もあるようです。今まで暮らしてきた人と新しく来た人が一緒になってやるから、ものの考え方が違うでしょう。生活スタイルも違うでしょう。やることも違うでしょう。
なかなかかみ合いません。そこで苦労しているのが今日集まってくれた区長さん、自治会長さんでしょう?
大きな店の旦那、職人の棟梁、学者・識者、お寺の坊さん、そういった人たちが集まって、「俺たちももう少し楽しく暮らせるようにしないとな」というようなことで考えたのが江戸しぐさなんです。
江戸に住む人たちの相互扶助とか共生の原点をなすものは何かというと、協働のまちづくりと同じなんです。人は皆、仏の化身です。ゆえに仕事以外では対等で平等なんですよ。互いに助け合わなくてはならない。現代社会も同じです。
江戸しぐさには2つの戒めがあります。1つは威張らないこと。町内会などで威張っている人いませんか?人前では決して威張ってはいけません。もう1つは、町内の道路掃除に行ったらゴルフのスイングみたいなことをやってみたり幼稚なしぐさをする、いわゆる稚児もどりがあります。
長屋にみる日本型コミュニティ
外岡
江戸の長屋には大体20所帯くらいが住んでました。そこに2人から3人くらい住みますから一つのブロックで60人から70人。管理人としての大家が1人います。
お年寄りが一人暮らしをしていても寂しく暮らしてはいませんでした。お産の時は母ちゃんたちが集まって手伝った。「子は国の宝」とされて、大名行列の前を横切っても、産婆さんは「切り捨て御免」にはなりませんでした。長屋に具合の悪い人がいると、朝夕、様子を見に行き、声を掛け合ってたんです。
孤独死というものはありませんでした。大家族の上に屋根をかけるのと同じような生活をして、何事においても大家を中心にいろいろな事をみんなで決めて育っていく、60人から70人がですよ。
村なんてのは50軒くらいしかないんだから、村も大きな屋根かけたような生活です。そこで、年寄りは「村の年寄り」、子どもは「村の子ども」です。そして皆さんのような区長さんや自治会長さんのような人を中心に、みんなでいろいろ話し合ってやる。これが典型的な日本型のコミュニティといわれるものです。
長谷川
江戸しぐさは、ここでは「幸せマナー」です。今回、私が思うには龍ケ崎では「龍ケ崎の幸せマナー」を作ればいいんです。どうやったら幸せに暮らせるかを市民の人たちは相互に作っていけばいいんです。その時に行政との関わり方も作ってほしい。
もちろん行政の方も変わっていかなければ駄目だけど、市民の方も変わっていかなければ駄目なんです。
外岡
一つお話しておきましょう。
皆さんは、奥さんがどこかへちょっと買い物行く時、「母ちゃん、どこへ行くんだ?」ってすぐ言うでしょうね。1人になるの怖いから「母ちゃん、どこ行くんだ?」
「どこ行くんだ?」というのは禁句なので言っちゃいけない。
長谷川
言っちゃいけなかったんです。
外岡
では、何て言ったらいいか?「どこ行くの?」と言ったら「気をつけてね」と言葉を付け加える。
奥さんがどこか行く時、「どこ行くの?気をつけて行ってこいよ」と言ってみてください。「あれ?父ちゃんちょっとおかしいよ」
それからもう1つは「ありがとう」。この言葉も全世界に共通する大事なことなんです。皆さんの家庭がいざこざを起こしていては、隣近所、向こう3軒両隣、町内のつきあいなんてできる訳がありません。
次に、帰ったら今日から使って欲しい単語が2つあります。
「母ちゃん、悪いけどこれ洗濯やっといてくれねぇかなあ。頼むよ。」できあがったら、面と向かって「ありがとう」。母ちゃんに面と向かって「母ちゃん、ありがとう」って言ってる人、いますか?
だから、地域の人たちにも「これ、お願いします」、「ありがとう」とここにいるリーダーは言ってください。地域は変わっていきますよ。以上です。
長谷川
最後に一言、江戸しぐさっていうのをほとんど話せなかったけど、これ実はリーダーのしぐさなんです。だから地域社会の中心的な人たちがやるべきしぐさなんです。
今日はすみません、私が少し長く話してしまったもので外岡先生の江戸しぐさの講演が圧倒的に短くなってしまいました。でも人生はたいてい途中で終わるから…
そういうことで今日は終わりにします。どうも、ありがとうございました。