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茨城県南部にも火山噴火の危険は及ぶ

更新日:2018年3月1日

関東平野の台地は火山灰の風化土層である関東ローム層によって厚く覆われています。
この大部分は、およそ2万年~9万年前の期間における富士山と箱根山の度重なる噴火の火山灰が飛来して堆積したものです。
龍ケ崎北部台地ではローム層の厚さは2~3mあり、噴火の度に地面は火山灰に覆われたことでしょう。
ローム層下部には厚さ8cmほどの黄橙色の層が挟まっています。
これは約6万年前における箱根山の1回の巨大噴火による降下軽石が粘土化したもので、東京軽石層と呼ばれています。
噴火当時には隙間の多い軽石であってその堆積の厚さは10cmを超え、地表の植物はほとんど埋まってしまったでしょう。
このように火山から遠く離れてはいても、偏西風の風下である火山東側では噴火の危険が広く及びます。
なお、この6万年前の箱根山噴火の火砕流は60km離れた横浜にまで達しています。


関東平野周辺には活火山が12ほどあります(図21)。
最も活動的なランクAは浅間山と伊豆大島、次いで活動的なランクBは那須岳、草津白根山、榛名山、富士山、箱根山、伊豆東部火山群(大室山など)です。
茨城南部に影響を与えるおそれの大きい火山は、位置関係および活動度からみて富士山と浅間山、次いで草津白根山で、これらは150kmほどの距離にあります。
富士山は1707年(宝永4年)に大噴火し、茨城南部では厚さ1cmほどの火山灰が降りました。
浅間山は1783年(天明3年)に大噴火し、茨城南部にも降灰がありました。
このとき生じた泥流は利根川を流れ下り、泥水や漂流物は河口にまで達しました。
北関東では北方にある火山の噴火の影響を受けます。鹿沼土と呼ばれているのは、4.5万年前の赤城山噴火による火山礫や軽石です。

図21周辺火山.jpg

火山灰の降灰とその堆積は、建物倒壊、植物の倒伏・枯死、視程悪化・交通マヒ、環境汚染、水質汚濁、健康障害など、多種類の被害・混乱・障害を引き起こします。
噴火の後に雨が降ると火山灰は固着して、被害が著しくなります。
首都圏に2~3cmの降灰があると、交通途絶や停電などにより大混乱が生ずると懸念されています。


火山噴火により生ずる最も危険な現象は火砕流です。
その大規模なものは火口から噴き上がった多量の火砕物が失速落下して生ずる噴煙柱崩壊型の火砕流です。
巨大規模になると火砕流は火口から100kmを超える遠方にまで達し、その周辺には多量の火山灰・軽石が降下します。
巨大火砕流噴火は広い火砕流台地と大カルデラをつくります。この地形は九州と北海道に多くみられます(図22)。
約7万年前の阿蘇山噴火は特に巨大で、火砕流は180kmの遠方にまで達し、その火山灰が北海道にて10cmを超える厚さに堆積している場所が認められています。
九州で巨大火砕流噴火が生ずると、風下にあたる関東地方にも大量の降灰が生ずる恐れがあります。


噴火の規模は噴出物の量で表されます。
7万年前の阿蘇山噴火は約600立方km、有史時代最大の噴火である1815年のインドネシア・タンボラ火山の噴火は175立方km、64万年前のアメリカ・イエローストーンの噴火は超巨大で1000立方kmでした。
巨大噴火が生ずるのは稀であり、巨大地震の頻度の10分の1以下ですが、エネルギーの規模は1000倍以上にもなり、全世界に大きな被害をもたらします。

図22カルデラ.jpg

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